回生病院からのお知らせ

2019年7月1日月曜日

家族教室のすすめ



先日の スマープの記事 でも出ましたが、
薬物依存症(アルコール依存症の方はアルコールに置き換えてください)の方は、
薬物を使わなくなった後も、家族との関係で、問題を抱えがちです。


よくある問題のひとつ、家族に薬物使用を疑われるケースをほりさげます。

たとえば、1年やめているとして

本人さんは、「こんなにやめられている」
家族は、「いまはやめているけど、また使うかもしれない」

と、感覚にズレが生じていることもあります。



家族は、本人さんが薬物を使用していたこと、一番身近で見ています。
家族も、苦しんだり悩んだりしています。

本人さんが、薬物を使用しなくなった後も、
つらかった記憶が、リセットされるわけではありません。


「ちょっと外出してくる」
「友達と会ってくる」

こうした 行動だけ を見て、

「もしかして、外で薬物を手に入れるのでは?」
「薬物仲間と会うのでは?」

と、疑心暗鬼になってしまう心情も、理解できます。



一方で、本人さんの心の動きはどうでしょうか。


やめてから、苦しい時があったけど、いまは安定している。
でも家族から疑いをかけられた途端、

「信用されてなくてショックを受けた」
「ちょっとずつ積み上げてきた自信が、崩れていきそうな感覚になった」

こうした心情も、とても理解できます。




「一度うしなった信頼を、取り戻すのは時間がかかるんですよ」
という声が聞こえてきそうです。

たしかに、信頼回復は大変ですし、近道はありません。

たとえば
通院や自助グループに通いつづける、というのは、治療に役立ちますし、
こうした目に見える積み重ねは、家族にとっても安心感につながります。

でも、家族の信頼を得るため、安心してもらうために、

外に出ない。
友達とも会わない(たとえ薬物仲間ではなくても)。

こんな生活を続けることは、はたして健康的といえるでしょうか。



薬物依存症からの回復において、過度なストレスは大敵です。
家族関係の悪化も、ともすると過度なストレスとなりえます。


お互いに無理しすぎることなく、信頼度を高めるためにはどうすればいいのか。

まずは、本人さんも家族も、正しい知識を得ることが、第一歩です。


「薬物を使ったのは本人であって、家族は関係ないはず」

そんなことはありません。
本人さんにとっても、家族にとっても、敵は ”薬物依存症という病気” です。
敵と立ち向かうには、まず相手のことを良く知ることって、言いますよね。

一番いいのは、家族の方に、薬物依存症の家族教室に参加してもらうことです。

「そういうとこに行けば、”自分の家族が薬物依存症なんだ”という現実が突きつけられる気がして、家族は行きたがらないと思う」
そう言った本人さんがいました。


たしかに現実を知ることは勇気がいるかもしれませんし、
家族関係の改善については、ケースバイケースではありますが、

家族教室は、薬物依存症に対する正しい知識や
薬物依存症の方に対するコミュニケーションの取り方も学べる場であり
心が軽くなったり、プラスになることの方が多いです。

もちろん、プライバシーも守られます。




薬物依存症で、家族との仲が険悪になって、そのまま疎遠になる方もいます。

でも、家族に薬物依存症のことを正しく理解してもらって、
お互いに信頼しあえる関係に、少しずつでもなれたら、
本人さんにとって、これ以上の 支え はないはずです。


「本人にどう接していいかわからない」
「また使うのでは、という不安がある」

そんな家族さんが目の前にいらしたら、
損することはないので、一歩、動いてみては? と、声をかけたいです^^



今回は、本人さんが現在、使用していない場合を想定してみましたが、
本人さんが薬物問題をかかえて苦しんでいる最中のご家族にとっても、
家族教室は、とても有意義な機会であるといえます。

福岡県や北九州市では、家族向けに無料の家族教室を開いています。
下にリンクを貼っておきますので、気になる方は、のぞいてみてください。


福岡県精神保健センター 薬物依存症 家族教室
北九州市立精神保健福祉センター 薬物依存症 家族教室