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当院には、お母さんのように厳しくも温かい看護師がたくさんいますが、
なかでも、「母ちゃんの中の母ちゃん」的存在の看護師がいます。
井上看護課長です。
旧・病院ブログでも紹介したことがあるので、2度目のご登場。
(そのときの記事「オフの横顔 ~オンとのギャップがありまして~」)
回生病院に入院経験のある患者さんなら、知らない人はいないはず。
体はSサイズ、でも存在感はLLLサイズ。 |
ご覧の通り、小柄ながら、いつでも元気いっぱい。
遠くにいても、どこにいるかすぐに分かるほど、通る声。
そんな課長、7月いっぱいで定年退職となり、6月末が勤務最終日でした。
いやだー! と言いたいのは山々ですがお口チャックで、
課長との日々や感謝の気持ちなど、2回にわけてお伝えしたいと思います。
患者さんとの日々 =・=・=・=・=・=・=・=・=・=
「〇〇さん、ちょっと爪切らせてくれる~?」
そっと寄り添い、患者さんの爪を切りながら、
「体調良くなって、よかったねぇ。ご家族の〇〇さんも、安心しとると思うよ~」
まるで世間話をするように語りかけます。
ふだんの課長の声の大きさからすると、静かでしみじみしたトーン。
ここは、回生病院の閉鎖病棟。課長が働く現場です。
当院に入院後間もない方や、精神状態がまだ十分に整っていない方などが
多くいらっしゃいます。
依存症や精神疾患といっても、抱えている問題や辿ってきた道、
こまかな精神症状など、「人によってさまざま」だと知ったという課長。
そんな中でも、共通して ”訪れる瞬間” があるということに気づきました。
入院したての頃、しかめっ面だったり、こわばっていた顔が、
変わってくる時期がきます。
それを見逃さないようにして、そんな患者さんには、
「いい顔になってきたね~」と声掛けをするようにしてきました。
自分のことを、こうして気にかける人がいる、喜ぶ人がいる、
ということが、 患者さんの自信にもつながっていくから。
反対に、先の見通しがたたず、落ち込んでいる患者さんがいたら、
「症状が落ち着いて、明るい顔になれる日は、絶対くるからね」
と伝えるようにしています。
たくさんの患者さんの回復過程を見てきたからこそ、伝えられる言葉です。
そんな課長でも、看護観がゆらぐ時期があったそう。
看護師長(課長の前の役職)になってすぐの頃ですね。
患者さんに対して、おごりが出た時期があって。
役職者になってすぐの頃は、決定権ができたことで、
病棟内でルール違反やトラブルを起こしがちな患者さんに対して、
強く対応することも増えていったのだとか。
いまの課長からは考えられませんが、
「自分の発言が、患者さんに影響するということに、気づけていなかった」
といいます。
ターニングポイントは、自身が病気を患い、入院生活を経験してから。
患者の立場になってみて、ああ、退院したいなって(笑)
患者さんの気持ちがよくわかりました。
患者さんからも「トップだからって、上から物を言っていいのか」と
苦言を呈されたこともあって、少しずつ、変化していったように思います。
相手の立場を尊重し、上から目線ではなく、説得してわかってもらえるように。
そのような対応を心がけるうちに、患者さんへの接し方も、
現在のような ”対話型” に変わっていきました。
そうはいっても、規則違反を繰り返してしまう患者さんがいた場合、
憎まれ役というか、厳しく指導する人間も、やはり必要です。
看護師として忘れてはいけないのは、患者さんの立場にたつこと。注意をしたあと、今度は別の看護師が、フォローをする。「あの人がああ言ったのは、あなたのことを大切に思っているから」とね。患者さんに心意が伝わりやすいですし、憎まれ役の立つ瀬もあります。
精神科の場合、自ら希望して入院してくる患者さんばかりではありません。
入院生活を後ろ向きに考えたり、治療に前向きになれない方もいて、
最初は、看護師に対して壁をつくる患者さんも、当然ながらいらっしゃいます。
でも「あのときの入院生活は、無駄ではなかったな」
後々、そう振り返ってもらえる日が来れば、よかったなと思うのだそう。
たまに、退院した患者さんから近況報告の電話があったり、
外来で「元気にしてます」「あの頃はこうやったですねぇ」などと
世間話する時間がうれしいんだよねと、目を細めて語っていました。
後編につづく